2005年 04月 20日
■いつまでもノモ・マニア |
いま、すごくハッピーな気分でいる。気むずかしく偏屈ないつもの皮肉屋ではなく、私はひどく素直でやさしい気持になっている。(明日はスポーツ新聞を買い込もう!)
──今朝は8時からテレビの前に陣取って、デビルレイズ対ヤンキースの試合を見た。そしてつい先ほど、野茂の今シーズン2勝目をしっかり見届けた。そのことが私を変えたのだ。(しばらくの間のことですがね)
この試合は、まず応援のスタンスがむずかしい。野茂に勝たせたいし、松井に打ってもらいたい。(ウーム……)それでいろいろシミュレーションしてみた。
・松井がホームランを打って、野茂が完封勝利(これは、ないな)
・松井がマルチヒットをを放って試合はデビルレイズが勝ち、野茂が勝利投手
・リードして野茂が引っ込んでから松井が快打するが、試合は結局デビルレイズの勝ち
百戦錬磨の野茂英雄だが、先発投手として背負った荷物はあまりにも多く、重かった。思いつくまま列挙すると
・スター軍団ヤンキースに挑む新興弱小チーム(ほとんどミスマッチに近いカード)
・好調な4番打者、松井秀喜との対決(昨年あびたホームランの苦い記憶、日本での注目度の高さ)
・スーパー投手、ランディ・ジョンソンとの投げ合い。(「三振奪取王」「ノーヒットノーラン男」の勲章を持つ二人だが、超高年俸で迎えられたランディと落ち目のヒデオの対決)
・マイナー契約に甘んじてメジャー生き残りを賭けている野茂は「後のない立場」
・前回の登板は最悪のできで敗戦投手、監督の激怒を買った野茂には汚名返上の機会
・前日のゲームでは19失点、ぼこぼこにやられた影響はないか
・チームはヤンキースタジアムで11連敗中
考えれば考えるほど、打ち込まれそうだし、勝てる気がしない。ジョンソンの凄みのある投球の前に三振の山を築く試合経過に、半分目をつぶる思い。昨シーズンに野茂が自らのバットでフェンス直撃の勝ち越し二塁打を放った場面を思い起こし、祈るような気持で見ていた。
野茂は好投し、バックもよく守った。6回、3-1で勝ち投手の権利を持ってマウンドを降りる。後続投手が打たれて1点差、さらにノーアウトで走者1、3塁となったときには「野茂不運、勝ちを逃す」という、明日の新聞見出しがちらついた。だがその後、勝負の微妙なあやがあって結局、デビルレイズがヤンキースを6-2で破った。
私はファンといえるほどの野球好きではない。だから常識として松井秀喜を知ってはいても、久しくイチロー選手を知らなかったし、野茂のこともあちらに渡るまで知らなかった。当然、野茂がメジャーに行くことになった経緯についてもくわしいことは知らない。それでも「石をもて追われるごとく」日本プロ野球界から去り、単身メジャー野球に飛び込んでいったとは理解している。それが、私のノモ・マニアの始まりだった。
予知した人はいなかったろうが、実はあれは遠く深いところに起きた大地震であった。以来、次々にプロ野球界を呑み込む津波を生み、現在、プロ野球を難局に立たせる事態につながっている、と素人目に思う。
当時は会社勤めをしていたから、試合を実況で見ることができなかった。休日でもわが家ではBS放送を受信できないので、土手ウオーキングをしながらラジオを聴いていた。未明の暗い土手を歩きながら、集団組織になじめない者への共感と声援を送っていた。
このように、まともで毒のない文章を書いていると自分らしくないので、ここでひとつわが偏見を披瀝してみたい。すなわち個人的な好き嫌いを記号で表すなら「野茂◎、松井○、イチロー×」となる。三者はそれぞれに希有の選手であり、実績にも甲乙をつけがたい。にもかかわらずこう断ずるのは「野茂のパイオニア精神と素朴さ、松井の礼儀正しい誠実さ、イチローのややけれんみのある言動」ゆえである。(猛反駁を覚悟です)
「野茂の試合を見るのはほんとに疲れるね」──一緒に観戦する妻とはよくこう言い合う。前年の不振でドジャースから放出され、限界説に取り囲まれながら、マイナー契約にも悪びれることなく黙々と投げる姿に、同世代の息子への思いが重なるせいもあるのだろうが、終始ハラハラドキドキで見守るからむりもない。
新聞は「大リーグ通算120勝」と書き立てるだろうが、このような記録には意識がうすい野茂は、いつもぶあいそな反応しか示さない。不肖、私はご本人以上(多分)にこの信じがたい大記録にこだわるのだが、ふっと別の思いにとらわれているのに気づく。
──たとえ負け投手となっても、メジャーへの道を拓いた男・11年目の野茂がこういう場面でマウンドに立っているだけですごいんだ。しかも松井と対決。こんな場面を見られるのは、この時代に生まれ合わせた幸せというものだ。結果よりも、野茂に1年でも長く投げてほしい。1試合でも多く見たい。
4月20日の朝、私は「この時期に、フリーな定年生活者であることの幸せ」をかみしめたものでした。
by knaito57
| 2005-04-20 15:31
| ■ときどき日記
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Comments(1)
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from あんつぁんの風の吹くまま
at 2005-04-22 06:47
タイトル : 一流選手の流出を防ぐには
これは江戸川土手を歩く いつまでもノモ・マニアのトラックバックです。 日本の野球は面白くなくなりましたね。一流選手がアメリカ大リーグへ行ってしまったせいでしょうか。でも、それも一流選手が日本のプロ野球に見切りをつけたということでしょう。日本のプロ野球とJリーグの違い。知ってますか。分かりますよね。方や企業名が付いているチーム。もう一方は地域名が付いているチームなのです。プロ野球は讀売巨人軍が球界の盟主などと云ってコミッショナーなどはただの飾りに過ぎない。そんな訳で、今でも企業が前面に出てきてあれ...... more
これは江戸川土手を歩く いつまでもノモ・マニアのトラックバックです。 日本の野球は面白くなくなりましたね。一流選手がアメリカ大リーグへ行ってしまったせいでしょうか。でも、それも一流選手が日本のプロ野球に見切りをつけたということでしょう。日本のプロ野球とJリーグの違い。知ってますか。分かりますよね。方や企業名が付いているチーム。もう一方は地域名が付いているチームなのです。プロ野球は讀売巨人軍が球界の盟主などと云ってコミッショナーなどはただの飾りに過ぎない。そんな訳で、今でも企業が前面に出てきてあれ...... more
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from 江戸川自転車クラブ
at 2005-07-28 20:27
タイトル : 頑張れ野茂
■いつまでもノモ・マニア私は野球ファンではないし、野茂ファンでもない。でもラジオで野茂の報道があるとつい応援してしまう。今日ヤンキースのマイナー契約をしたとの報道があり、彼の険しいこれからの選手生活をどう全うするのか見届けたい。 プロスポーツ選手(だけではない芸術家なども)には2つのタイプがある。 (1)権威志向タイプ 例えば巨人軍というブランドに価値を置くタイプ。 この人種は勲章などもらうと心底から喜ぶタイプ。 何時の間にかどこかの大政党から議員に立候補する人もいる。 (2)職人タイプ ...... more
■いつまでもノモ・マニア私は野球ファンではないし、野茂ファンでもない。でもラジオで野茂の報道があるとつい応援してしまう。今日ヤンキースのマイナー契約をしたとの報道があり、彼の険しいこれからの選手生活をどう全うするのか見届けたい。 プロスポーツ選手(だけではない芸術家なども)には2つのタイプがある。 (1)権威志向タイプ 例えば巨人軍というブランドに価値を置くタイプ。 この人種は勲章などもらうと心底から喜ぶタイプ。 何時の間にかどこかの大政党から議員に立候補する人もいる。 (2)職人タイプ ...... more
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den8den8 at 2005-04-21 07:39
「野茂◎、松井○、イチロー×」には、オオ(カ)タドーカンですな。その理由にも、こちらもそんなに情報をもっているわけではないけど、うなづけるんです。
ところで、このスキン、前の書き込みの日付の色枠と、新しい書き込みのデータとが、くっつきすぎですよね。これは自動だから、改行入れてもだめか。
ところで、このスキン、前の書き込みの日付の色枠と、新しい書き込みのデータとが、くっつきすぎですよね。これは自動だから、改行入れてもだめか。
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