2006年 12月 18日
■“数痴”の告白 |
6時、起き抜けに家を出る。辺りはまだ夜だ。(冬至も近いからな)と思いながら土手に登ると、ジャスト夜明け。未明から黎明にかけての5分間……『夜と朝のあいだに』という歌を思い出した。ピーターが70年ころに歌ったもので、音感のわるい耳障りな歌。極言すればチープな文化(音楽から社会まで)の象徴のような歌だった。
そうだ。きょうは“数痴”でいこう。省みれば、これまで私は正体不明を幸いに、動植物から美術音楽はては地理歴史、運動生理学まで諸学なんでもござれの“スーパーおじいちゃん”みたいに吹いてきた。いくら無責任ブログでも気が引ける、というわけで音痴ならぬ情けないほど数学がダメな話。
私は時速6キロで歩く。彼は時速10キロでジョギングする。二人はいつも「海から29㎞」地点をスタートして「35㎞」地点で折り返すので、往復12キロの行程である。
・同時にスタートした場合、私と先に折り返してくる彼がすれ違うのはどの地点か。
・私よりも20分遅れてスタートした彼は、どの地点で私を追い越すか。
・「海から29㎞」をスタートした私と、同時刻に「35㎞」を出発した彼が出会うのはどの地点か。
初歩の数学問題なのだろうが、私にはこれがさっぱりわからない。というよりも、考えるのもイヤなのだ。数学の時間に、この種の問題にぶつかって困惑した記憶はいまだに消えない。こういう、ヒトの頭を混乱させるような学習はよろしくないと思う。
もっと高度の難問もある。
・対面からすれ違うとき、二人がそれぞれ体感する速さは時速何キロくらいか。
・15キロの向かい風を受けて時速6キロで歩いた場合、体感風速はどれくらい。
・また、歩く速さはどれくらい減速するか。
・同じく追い風15キロの場合はどうか。
──小学生のころ、割り算がなかなかわからなかった。宿題が出ると“筆算”でやる。「87÷9」なら、紙に87この黒点を書き、それを9こずつ○で囲む。すると○が9こできて点が6こ残る。答えは「9あまり6」となる。これを問題ごとにやったものだ。
池の周りというのも苦手だったな。
・周囲80メートルの池がある。その周りに2メートル間隔で杭を打ちたいが、杭は何本必要か。また杭と杭の間に苗木を一本ずつ植えるには苗木は何本必要か。
80メートルが直線ならいいのに、周囲というのがいやらしい。ヒトを罠に陥れようとする底意地のわるい問題だ。これは紙に大きな○を書き、なんとか杭の数を出す。それから杭の数だけ点を打ち、その間を数えて苗木の本数を出す。
それでも、宿題を忘れないまじめな生徒だった。そんな涙ぐましい努力を思いおこすにつけても、こういう工夫をする知恵というか器用貧乏な本質が当時からあったことに苦い思いをもって気づく。
「アキレスと亀」の話も私を悩ませる。私は亀、彼は俊足のアキレス。
──先行する私に追いつき追い越そうと彼は走る。彼が10分間走れば二人の差はだいぶ縮まるが、私だってその間にいくらかは進んでいる。かりにその差がスタート時の半分に詰まったとしても、あと半分を詰める間に私もまた少しは進む。彼はさらに距離を縮めようと走るが、その時間にも私は足踏みしているわけではなく、やはり時速6キロで歩き続けている。すなわち彼はいくら急いでも、どこまで走っても、歩きの私に追いつくことはできない……はずなのに、実際には私は簡単に追い越されてしまう。
考えるだけで頭がこんがらかる。難問にぶつかるとエルキュール・ポアロなら“灰色の脳細胞”が活動を始めるのだが、私の場合こういう話になると、とたんに頭の中に灰色の霧が立ちこめたようになって思考が止まってしまう。数学的センスがまるでない“数痴”なのだ。
だから、年末調整とか保険料控除とか年金の計算など、とうとう理解できないままだった。そういう局面をすり抜けるように曲がりなりにもサラリーマン人生を全うして、こうして土手を歩いているわけだ。
ふーっ。この短文を書くだけで歩くよりも疲れた。でも告解室に入って懺悔してきたようなせいせいした気分だ。
そうだ。きょうは“数痴”でいこう。省みれば、これまで私は正体不明を幸いに、動植物から美術音楽はては地理歴史、運動生理学まで諸学なんでもござれの“スーパーおじいちゃん”みたいに吹いてきた。いくら無責任ブログでも気が引ける、というわけで音痴ならぬ情けないほど数学がダメな話。
私は時速6キロで歩く。彼は時速10キロでジョギングする。二人はいつも「海から29㎞」地点をスタートして「35㎞」地点で折り返すので、往復12キロの行程である。
・同時にスタートした場合、私と先に折り返してくる彼がすれ違うのはどの地点か。
・私よりも20分遅れてスタートした彼は、どの地点で私を追い越すか。
・「海から29㎞」をスタートした私と、同時刻に「35㎞」を出発した彼が出会うのはどの地点か。
初歩の数学問題なのだろうが、私にはこれがさっぱりわからない。というよりも、考えるのもイヤなのだ。数学の時間に、この種の問題にぶつかって困惑した記憶はいまだに消えない。こういう、ヒトの頭を混乱させるような学習はよろしくないと思う。
もっと高度の難問もある。
・対面からすれ違うとき、二人がそれぞれ体感する速さは時速何キロくらいか。
・15キロの向かい風を受けて時速6キロで歩いた場合、体感風速はどれくらい。
・また、歩く速さはどれくらい減速するか。
・同じく追い風15キロの場合はどうか。
──小学生のころ、割り算がなかなかわからなかった。宿題が出ると“筆算”でやる。「87÷9」なら、紙に87この黒点を書き、それを9こずつ○で囲む。すると○が9こできて点が6こ残る。答えは「9あまり6」となる。これを問題ごとにやったものだ。
池の周りというのも苦手だったな。
・周囲80メートルの池がある。その周りに2メートル間隔で杭を打ちたいが、杭は何本必要か。また杭と杭の間に苗木を一本ずつ植えるには苗木は何本必要か。
80メートルが直線ならいいのに、周囲というのがいやらしい。ヒトを罠に陥れようとする底意地のわるい問題だ。これは紙に大きな○を書き、なんとか杭の数を出す。それから杭の数だけ点を打ち、その間を数えて苗木の本数を出す。
それでも、宿題を忘れないまじめな生徒だった。そんな涙ぐましい努力を思いおこすにつけても、こういう工夫をする知恵というか器用貧乏な本質が当時からあったことに苦い思いをもって気づく。
「アキレスと亀」の話も私を悩ませる。私は亀、彼は俊足のアキレス。
──先行する私に追いつき追い越そうと彼は走る。彼が10分間走れば二人の差はだいぶ縮まるが、私だってその間にいくらかは進んでいる。かりにその差がスタート時の半分に詰まったとしても、あと半分を詰める間に私もまた少しは進む。彼はさらに距離を縮めようと走るが、その時間にも私は足踏みしているわけではなく、やはり時速6キロで歩き続けている。すなわち彼はいくら急いでも、どこまで走っても、歩きの私に追いつくことはできない……はずなのに、実際には私は簡単に追い越されてしまう。
考えるだけで頭がこんがらかる。難問にぶつかるとエルキュール・ポアロなら“灰色の脳細胞”が活動を始めるのだが、私の場合こういう話になると、とたんに頭の中に灰色の霧が立ちこめたようになって思考が止まってしまう。数学的センスがまるでない“数痴”なのだ。
だから、年末調整とか保険料控除とか年金の計算など、とうとう理解できないままだった。そういう局面をすり抜けるように曲がりなりにもサラリーマン人生を全うして、こうして土手を歩いているわけだ。
ふーっ。この短文を書くだけで歩くよりも疲れた。でも告解室に入って懺悔してきたようなせいせいした気分だ。
by knaito57
| 2006-12-18 09:55
| ■ときどき日記
|
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Comments(5)
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散歩好き
at 2006-12-18 12:33
x
試験と縁が無くなった現在でも答えを出さなければならに事があります。
無理に答えを出すわけですがそれが10年単位の経験で理解できたり、続けてその道の本を読んでいてそういうことだったのだ答えが見つかる事があります。土手を歩き有限の時間を一時忘れられるのと同じように気持ちよく古典を読み理解を深めたいと出来ぬ事を念じています。
無理に答えを出すわけですがそれが10年単位の経験で理解できたり、続けてその道の本を読んでいてそういうことだったのだ答えが見つかる事があります。土手を歩き有限の時間を一時忘れられるのと同じように気持ちよく古典を読み理解を深めたいと出来ぬ事を念じています。
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saheizi-inokori at 2006-12-18 15:35
私も数学が苦手、高校時代は問題集を暗記してナントカしのぎましたが、大学受験では五問中一つしか出来ませんでした。
国語とか他の学科でナントカ合格したのです。今の世界史騒動を聞くと世界史さまさま、試験科目の多いことに感謝しています。
落ちていると特別奨学生という新制度の適用がなくなって進学がかなり経済的に大変でしたから。
落語の壺算、タネを聞いていてもなおそのたびにこんがらがっちゃいます
国語とか他の学科でナントカ合格したのです。今の世界史騒動を聞くと世界史さまさま、試験科目の多いことに感謝しています。
落ちていると特別奨学生という新制度の適用がなくなって進学がかなり経済的に大変でしたから。
落語の壺算、タネを聞いていてもなおそのたびにこんがらがっちゃいます
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knaito57 at 2006-12-18 20:05
世間を狭く生き『ちはやふる』のご隠居みたいに「知らないことなど何もない」って顔してますが、実はわからないことを避けたり先送りして来ただけ。このトシになってもわからないことだらけ……土手でこういう思いにとらわれると足が止まっちゃう。恐ろしいですよお。
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antsuan at 2006-12-25 09:34
私も数学はからっきしダメなんですが、こと税金の計算となるとがぜん能が活性化されます。小学生の時から確定申告のやり方を教えれば、算数嫌いはなくなるかも知れません。
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knaito57 at 2006-12-26 10:44
確定申告も当然ダメなんです。やむをえないときは“相談会”の日に早くから行って、出張サービスの税理士に計算してもらい名前とはんこだけ……経営とか商売とかにはまるで不向きでして。