2007年 08月 22日
●鳥とめない話 |
杖突街道遠征以来、土手を歩いていない。疲れがでたとか自重しているとかではなく、「熱中症で倒れた人が何人」という連日のニュースをいい“休業の言い訳”としているわけだ。で、今回は手抜きならぬ“足抜き”のひまダネでお茶をにごすことに。
暑さはどこも同じとはいえ、日陰がまったくない土手の道はこたえる。炎暑の土手で今いちばん元気なのはアレチウリだ。雨不足にもかかわらず、たけだけしいばかりに繁茂している。先日の朝日新聞に「ツバメのねぐら危機」という記事があった。要旨は──
多摩川河川敷で外来植物アレチウリが広く繁殖し、ツバメの“集団ねぐら”が危機に陥っている。日本で巣立ったツバメは、初夏から秋にかけて河川敷のヨシ原に集団で住みつき、その葉に止まって眠る。生育の早いアレチウリがつるをからませてヨシ原を覆うため、ツバメはヨシ原に入り込めずヨシ自体も枯れてしまう。その結果、ツバメの飛来は03年の1割に激減、関係者はアレチウリの除去に乗り出した。
アレチウリについては獰猛アレチウリで取り上げたことがあるが、日光(尾瀬?)でオオハンゴンソウの刈り取りボランティアが活躍中だという。経験や想像力をこえて迫りくる気象異変とともに、生態系変化の進行速度を実感する事象がさまざまなところに見られる。
近年、カラスの繁殖がよく話題になり、市街地ではさまざまな被害が報告されている。かすめ取ってきた針金製のハンガーでつくった巣が電柱や高木の上に見つかって驚いたり感心したりするが、だいたいが嫌われ者だ。もちろん土手にも多く、たいていは群れている。図体が大きいうえ、妙に知能が高いらしいから、近づくときは不気味でさえある。
カラスの知能については動物行動学者(ローレンツ『ソロモンの指輪』)などの克明な観察があり、道具を使うとか20ほどの言語を持っているなど驚くような事実が多く報告されている。
だが、それはそれとして──私にはカラスを童謡・唱歌にあらわれた子ども(詩人)の感性で見たい気持ちがある。
♪♪烏 なぜ啼くの 烏は山に 可愛七つの 子があるからよ
可愛 可愛と 烏は啼くの 可愛可愛と 啼くんだよ
山の古巣へ いって見て御覧 丸い目をした いい子だよ
『七つの子』(詞・野口雨情)
私が生まれ育ったのは世田谷区烏山町というところだった。戦争をはさんだ大変な時期、病気の父と献身的な母の愛情に包まれて七人兄弟がなんとか育つことができたのだった。だから、これを「自分たちの歌」のように感じていた時期がある。もちろん、幼いときから“烏”と“鳥”という漢字を正しく覚えていたっけ。
あの時代、子を慈しみ育む気持ちはどの親も同じだったろう。けれども、健康と生活の不安がつのる日々にこれを歌った(現在の私よりずっと若い)父の心情を思うと特別の感慨がある。散歩の父にぞろぞろくっついてよく歌ったその情景は今も薄れない。
この歌がつくられたのは明治40年。それはくしくも母の生年であり、その母は間もなく満百歳になる。そして今、四人の子育てを終えて老境にさしかかった私が、週末ごとにその介護に通っている。
今年は庭で、何度かヒヨの子が孵った。ヒヨは騒々しいうえ、びわ・トマト・柿などを荒っぽく食い散らすから好きではないのだが、その子育てのようすを見ると微笑ましく、また身につまされるものがある。
先月、土手効果で紹介したのは三兄弟だったが、今回は四兄弟。つい親鳥の気分になって、そのようすは見飽きることがない。
一日中チーチーいいながら待つところに、親がセミや虫などをくわえて帰り、また忙しく出かけていく。餌をもらう(与える?)順番は決まっているらしく、にぎやかだけど取り合いはしない。
できのいい子とダメな子がいるのはヒトと同じようだ。先日は木から木へ飛ぶ練習中、私の部屋のガラスにぶつかって落ちたやつがいる。手づかみしても怖さを知らないらしく、きょとんとしている。写真を撮って逃がしたけれど、しばらくするとまた低木の枝に引っかかっている。啼き叫ぶ親の声を聞くにつけ(親はたいへんだなあ)と思う。
ウグイスが住宅地で啼いたり、クマが人里に現れたり、夜になってもアブラゼミが啼きつづける……などの異変を近年よく耳にする。環境変化はいうまでもないが、自然界の大きな変化の一端なのだろう。そういう変化の中で、親の気持ちだけは不変なのかもしれない。
(先ごろ“散歩好き”さんがアップしたチョウゲンボウなど一連のダイナミックな画像はムリなので、当方は“ほのぼの路線”で……)
暑さはどこも同じとはいえ、日陰がまったくない土手の道はこたえる。炎暑の土手で今いちばん元気なのはアレチウリだ。雨不足にもかかわらず、たけだけしいばかりに繁茂している。先日の朝日新聞に「ツバメのねぐら危機」という記事があった。要旨は──
多摩川河川敷で外来植物アレチウリが広く繁殖し、ツバメの“集団ねぐら”が危機に陥っている。日本で巣立ったツバメは、初夏から秋にかけて河川敷のヨシ原に集団で住みつき、その葉に止まって眠る。生育の早いアレチウリがつるをからませてヨシ原を覆うため、ツバメはヨシ原に入り込めずヨシ自体も枯れてしまう。その結果、ツバメの飛来は03年の1割に激減、関係者はアレチウリの除去に乗り出した。
アレチウリについては獰猛アレチウリで取り上げたことがあるが、日光(尾瀬?)でオオハンゴンソウの刈り取りボランティアが活躍中だという。経験や想像力をこえて迫りくる気象異変とともに、生態系変化の進行速度を実感する事象がさまざまなところに見られる。
近年、カラスの繁殖がよく話題になり、市街地ではさまざまな被害が報告されている。かすめ取ってきた針金製のハンガーでつくった巣が電柱や高木の上に見つかって驚いたり感心したりするが、だいたいが嫌われ者だ。もちろん土手にも多く、たいていは群れている。図体が大きいうえ、妙に知能が高いらしいから、近づくときは不気味でさえある。
カラスの知能については動物行動学者(ローレンツ『ソロモンの指輪』)などの克明な観察があり、道具を使うとか20ほどの言語を持っているなど驚くような事実が多く報告されている。
だが、それはそれとして──私にはカラスを童謡・唱歌にあらわれた子ども(詩人)の感性で見たい気持ちがある。
♪♪烏 なぜ啼くの 烏は山に 可愛七つの 子があるからよ
可愛 可愛と 烏は啼くの 可愛可愛と 啼くんだよ
山の古巣へ いって見て御覧 丸い目をした いい子だよ
『七つの子』(詞・野口雨情)
私が生まれ育ったのは世田谷区烏山町というところだった。戦争をはさんだ大変な時期、病気の父と献身的な母の愛情に包まれて七人兄弟がなんとか育つことができたのだった。だから、これを「自分たちの歌」のように感じていた時期がある。もちろん、幼いときから“烏”と“鳥”という漢字を正しく覚えていたっけ。
あの時代、子を慈しみ育む気持ちはどの親も同じだったろう。けれども、健康と生活の不安がつのる日々にこれを歌った(現在の私よりずっと若い)父の心情を思うと特別の感慨がある。散歩の父にぞろぞろくっついてよく歌ったその情景は今も薄れない。
この歌がつくられたのは明治40年。それはくしくも母の生年であり、その母は間もなく満百歳になる。そして今、四人の子育てを終えて老境にさしかかった私が、週末ごとにその介護に通っている。
今年は庭で、何度かヒヨの子が孵った。ヒヨは騒々しいうえ、びわ・トマト・柿などを荒っぽく食い散らすから好きではないのだが、その子育てのようすを見ると微笑ましく、また身につまされるものがある。
先月、土手効果で紹介したのは三兄弟だったが、今回は四兄弟。つい親鳥の気分になって、そのようすは見飽きることがない。
一日中チーチーいいながら待つところに、親がセミや虫などをくわえて帰り、また忙しく出かけていく。餌をもらう(与える?)順番は決まっているらしく、にぎやかだけど取り合いはしない。
できのいい子とダメな子がいるのはヒトと同じようだ。先日は木から木へ飛ぶ練習中、私の部屋のガラスにぶつかって落ちたやつがいる。手づかみしても怖さを知らないらしく、きょとんとしている。写真を撮って逃がしたけれど、しばらくするとまた低木の枝に引っかかっている。啼き叫ぶ親の声を聞くにつけ(親はたいへんだなあ)と思う。
ウグイスが住宅地で啼いたり、クマが人里に現れたり、夜になってもアブラゼミが啼きつづける……などの異変を近年よく耳にする。環境変化はいうまでもないが、自然界の大きな変化の一端なのだろう。そういう変化の中で、親の気持ちだけは不変なのかもしれない。
(先ごろ“散歩好き”さんがアップしたチョウゲンボウなど一連のダイナミックな画像はムリなので、当方は“ほのぼの路線”で……)
by knaito57
| 2007-08-22 06:24
| ●土手のたはこと
|
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Comments(6)
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saheizi-inokori at 2007-08-22 07:28
ほのぼの、しんみりしました。お母さんお大事に。
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antsuan at 2007-08-22 09:38
この時期、行軍は夜明けか日没が好いようです。ほんとうに南方に転戦したかたがたの苦労が忍ばれます。介護倒れにならぬようご自愛下さい。
家の前を流れる川のコイに餌をやる人々のまわりに鳩などの鳥たちが集まってきます。当然カラスもやって来て、可愛くない声を上げ不快指数がぐんとアップしております。
家の前を流れる川のコイに餌をやる人々のまわりに鳩などの鳥たちが集まってきます。当然カラスもやって来て、可愛くない声を上げ不快指数がぐんとアップしております。
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knaito57 at 2007-08-22 15:22
saheiziさん、じつは葛藤の日々なんですよ。いつか書いていらした「完璧にめんどうみをしながら乏しい会話」という現実に揺れ動きながら、少しでも後悔が少ないようにとがんばっているんです。
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knaito57 at 2007-08-22 15:23
antsuanさんのお宅は三兄弟、わが家は四兄弟。当方はすでに巣立ちましたが、子育てのようすを見ていると当時を思い出します。「アラ、じょうず」とか「親の心、子知らずねえ」などと言う妻とながめていると暑さをしのげます。
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散歩好き
at 2007-08-22 18:19
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春からギィーギィー煩かったヒヨドリが暑くなると声が聞こえなくなり幾らか小生の気持ちが苛立たなくなったと思っていたら子育て中なのですね。巣立ってしまうと2番子を立て続けに産むのですか?普通はそうであっても違う巣で営巣しますがknaito57さんの庭には巣が複数有るのですか?どちらにしても子孫を残すメスの働きの偉大さに頭が下がります。
それにしても雛は可愛いですね。
家でも娘が2歳になる孫(ひろちん)のブログを毎日アップしてくるので女房もその姉(伯母)も毎日コメントを入れるのを楽しみにしています。
ITのお蔭で遠くにいても楽しく会話をしています。
それにしても雛は可愛いですね。
家でも娘が2歳になる孫(ひろちん)のブログを毎日アップしてくるので女房もその姉(伯母)も毎日コメントを入れるのを楽しみにしています。
ITのお蔭で遠くにいても楽しく会話をしています。
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knaito57 at 2007-08-23 11:10
散歩好きさん。おかげさまで野鳥や野草を見る目が変わってきました。そのことが土手歩きの時間をずいぶんと豊かで奥深いものにしてくれると、いつも思っています。